本書の3ヵ月後に上梓された『
イワシと気候変動―漁業の未来を考える (岩波新書)』と、表裏一体をなす書である。(と断定してしまうのは、著者に失礼かもしれないが。苦笑)
レジーム・シフト理論そのものを理解し、そこから、これからの人類文明が自然資源をどのように利用して行くべきか、広い視野で考えたい向きには、『
イワシと気候変動―漁業の未来を考える (岩波新書)』をお勧めする。それに対して、日本の漁業や漁業資源管理の現状と問題点、その課題解決に向けた関係者の努力などに絞り込んで知りたいのであれば、本書の方が良い。どちらにもあまり馴染みのない人は、先に本書を読んでレジーム・シフト理論の大雑把なアウトラインをつかんでおくと良いだろう。(本書は非常に分かりやすい。)
また日本の漁業をここまで追い詰めた漁業政策や消費者の態度にまで考えを広げるのであれば、『
これから食えなくなる魚 (幻冬舎新書)』も合わせて読むべきだ。
いずれにせよ、ここで明らかになる日本の漁業の姿は、ほぼ、「お前はもう死んでいる」状態である。日本の漁業と魚食文化とを守ろうとするいくつかの努力も紹介されてはいるが、遅れて来た市場原理主義のバトルロイヤルの中で、それらの戦いはあまりにも孤立無援に見える。
悲しいのは、我々一般消費者がそのような日本の漁業の本当の姿を知らぬまま、間も変わらず貴重な天然資源である海の魚を浪費して、自らの罪に気づかずにいることだ。スーパーの店頭の向こう側で何が起きているのか、生産の現場から切り離されて孤立した現代の消費者には、何も見えていないのである。ただのサラリーマン家庭の平日の食卓にマグロの刺身が並ぶようになったのは、僅かここ10数年ばかり前からだと思うが、今の子供たちが大人になる頃には、マグロを含めた海の魚のほとんどは、庶民がめったに口に出来ない“幻の食材”になっているかもしれない。
我々が今、そういう時代に生き、そういう場所に立っているのだと言うことを理解するためにも、出来るだけ多くの人に、是非とも読んで欲しい本である。