1981年、劇場で観賞。
初めて上映中に顔を押さえて劇場を飛び出していく人を観た映画。
VHS、DVDは未購入。
本Blu-rayが初めてのソフト購入です。
久し振りの再見でしたが、やはり実に面白く、かつ怖ろしい映画でした。
うらぶれたアパート(窓からは隣のビルの壁が見える)で、心ならずも結婚した妻と奇形の赤ん坊と同居する事となったヘンリーの悪夢の様な生活をグロテスクなユーモアとシュールなイメージ満載で描いて居ます。
今観て怖いのはヘンリーが結構幸せそうな事。
細かい照明と室内装飾(なぜか観葉植物が鉢ではなく直接盛り土に植えられている)、リンチ監督自身が手掛けた特撮(コマ撮りアニメ、クリ―チャ―造型)、俳優達の怪演、通奏低音の様に映画を蔽いつくすアラン・スプレッドのノイズ・音響効果。
そして、数々のロック・バンドがカバーした、カルト・アーチスト、ピーター・アイヴァースによる白痴的名曲、「イン・ヘヴン(天国では全てがO.K.)」,e.t.c…。
映像的にもその後のリンチ映画に繰り返し現れるイメージが既に使用されている事が良く解ります。
リマスターされた映像は素晴らしく、音声も、同時に流れる風の音とラジエーターがシュー・シュー言う音がちゃんと聞きわけられました。
キューブリック監督もどうやって造ったかを知りたがった(そしてリンチは現在も製法を秘密にしている)リアルな赤ん坊の不気味さは唯一無比でした(公開当時は大ヒットしたエレファントマンにあやかってかこの赤ん坊の顔の部分を隠したポスターが有りました)。
本編にチャプターを付けず、予告編以外の特典を収めない方式にもこだわりを感じました。
特典DVDはおそらく既出のDVD-BOXやリマスター版DVDに過去収録された物の流用だと思われますが、初見の筆者にとってはとても興味深い物でした。
リンチの本作とAFI入学〜在学〜不法占拠(?)時代の思い出話も含むインタビューは85分に及びます。
AFI(アメリカ映画協会)に入学したリンチがそこで生涯の師と友に巡り合えた事。
協会の所有する旧富豪の55室も有る建築物にリンチが寝泊まりし、機材も格安でリース出来、映画スタジオが捨てた廃材を再利用することで数年に及ぶイレイザーヘッドの撮影を耐え抜けた事。
そして、リンチ以上の仕事の鬼、アラン・スプレッドの描写等も実に素晴らしい。
電話をスピーカーモードにしてかつてのスタッフに語りかけながら進める方式はツインピークスのクーパー捜査官を思わせる楽しさでした。
短篇は長編デビュー以前の習作4篇と、リュミエール映画上映100周年を記念して再現された当時のカメラを使って撮った1995年の1篇が収録されていました。
各々巻頭にリンチ監督の解説付きです。
既出DVDからの流用だと思われるメニュー画面(本編からカットされた映像がループしている)の裏話は愛猫家からクレームが来る恐れ有り。
リンチファン、繰り返し観賞に耐える怪奇映画をお探しの方、文句無しに大推薦です。
妊婦の方、新生児がいらっしゃるご家庭には冗談抜きでお薦め致しません。