浜辺でのんびりひなたぼっこをしているオタリアの群れに、突然シャチが海中から浜辺に乗り上げて、子供を追い詰め噛みつく。獰猛なシャチの映像。ところが、著者によると、この画像は事態を半分しか伝えていない。実は海中には、もう1匹別のシャチがいて、慌てて海中に逃げてくるオタリアの子供を、待ち受けていて仕留める。しかも浜辺に乗り上げるのは、シャチにとってもリスクのある行動で、この狩猟の前に、他所で、自から浜辺に乗りあげ、自力ですぐに海に戻れる練習をしているそうです。ザトウクジラでも、自分達が出す泡を使った集団でのニシン漁が見られます。このような生きるための高度な知能だけではなく、人間と接触が多い沿岸性のイルカや水族館の調教イルカでは、ヒトとのコミュニケーション行動も確認されています。
この海中に住む特別な哺乳類、鯨を研究している著者が、鯨研究の最新の研究成果、加えて民俗学的な鯨譚、日本でのイルカブームの変遷現象などをも詳説、鯨総覧のようです。しかし本書の主眼は、イルカの特別な点、その知能の研究史です。米国でのイルカの知能研究史。ベイトソンのダブルバインドもイルカに試されたようです。それらの研究者に続く著者が、専門のイルカの認知能力研究の現状を述べています。水族館のイルカに聴覚と視覚との刺激を組み合わせて、ヒトと双方向で互いに意図を発信、それを理解できる方法を工夫。イルカの言語の理解をはかっているそうです。現状では、個物の命名段階で認識を共有できているそうです。今後研究が進み、異種間コミュニケーションが更に進めば、ヒトも今とは違う見方ができるようになるかもしれませんね。