この作品にはじめて触れたのは高校生の時だった。兄から村上龍氏による旧訳を薦められて読んだ。いたく感銘を受け、それからの自分の人生の価値観を方向付けた。
社会人になり、英語や異文化(西洋の)コミュニケーションを学び、また聖書の内容についても詳しくなった。そんな中、ネットで原書(ペーパーバック)とそれを著者自身が朗読した録音テープが入手できると知り、英語の勉強も兼ねようとして購入し、通勤電車の中で朗読を聴きながら原書に目を通した。そして旧訳があまりにも原書と異なっていたことに愕然とした。
この新訳は、かなり原書に近い雰囲気で好感が持てた。旧訳に感じられる、原書には無い猥雑さや、聖書に対する理解度の浅さはなく、原作者が表現している世界観を捻じ曲げることなく伝えることができていると思う。
旧訳は原書を原作としてテレビや映画のようにドラマ化したものでまったく別物、新訳は原書の雰囲気を忠実に訳したものであるといえるのではないかと思う。旧訳は読み易くとっつきは良いが原書とは異なるものであり、この新約は原書に近い分、イメージをしっかりとつかむのには知性の基礎体力のようなものが必要になる様に感じた。