イランが好きです。イラン映画よく見ます。イラン史の本も色々読みました。イランも旅行しました。そんなわけで、表紙を見ているだけでは、「旅行ガイドと在住記をまとめたような本なんじゃないの?」とちょっとなめてかかっていたのですが、実際に本屋でぱらぱらとめくってみて、各章のタイトルを見て「おや」と思いました。
予想通り、生活していれば誰でも書けるようなトピックである「生活・政治(宗教)・経済・芸術(映画)」に加えて、予想に反して、言語・文学、歴史、宗教(ゾロアスター教)などが掘り下げられて記載されていました。イランの民話とアレクサンドロス伝説やシンデレラ物語、ゾロアスター教とイスラム教と犬と猫の関係からペルシャ語史、現代方言など、通常の書籍では得られなかった知見が多く、非常に参考になりました。サッファール朝とブワイフ朝の武人想像図なんて、日本で出ている歴史書にも載ってないものにお目にかかれるとは!
生活や宗教についても、ただものではない。例えば暦の項目では、わざわざイラン民族がイラン高原に来る前の暦・来たあとの暦、アケメネス朝時代の暦・イスラム時代の暦・現代暦と、それぞれちゃんと語る徹底ぶりしかも2〜3頁とコンパクトなので読みやすい。
こうした密度の濃さは、日本のイラン研究者を総動員したのでは?と思える55人にも及ぶ執筆陣に支えられている。各人各様、イランへの愛に満ちていることがよくわかる。しかも関連記述はちゃんと章番号が転記してあり、執筆陣が多いながらちゃんとまとまっている。お買い得です。