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著者はイラク戦争の「終結」後に陸路からイラク入りして、現地をつぶさに取材した。その結果わかってきたのは、国際社会が気づきもしなかったような生き生きとした社会的なネットワークが、独裁の重圧が外れた途端にイラク国民の生活の表面に浮き上がってきたという事実である。
アメリカ占領軍はこのようなイラクに土着の社会的なネットワークを抑圧することによって、ますますイラク国民の意識から離反するという悪循環に陥っている。
本書に登場する人物たちは多彩である。タクシーの運転手から街であった普通の人々をはじめとして、戦後アメリカ軍と一緒に入ってきた亡命イラク人、サダムの圧制下で亡命を余儀なくされた軍人、宗教家、等々。丁寧な人物紹介を通してイラクの生きた現実が浮かび上がってくる。
イスラームについても、シーア派がイラン系で、スンナ(スンニ)派はサダム系、などという通常流布されている誤った単純化された図式を著者は排除する。イラクの人々にはもっと奥深い知恵があり、地域社会に根付いた生活と文化があるというのである。
復興行政を担う実務能力も無いのに権限や利権のみを独占したがるアメリカの占領統治は混迷を深めるばかりである。イラクの人々の前途は多難すぎる。だからこそ、著者のように土地に根付いて生活する人々の目線から現実を見つめる必要がある。
『アメリカはなぜイラク攻撃をそんなに急ぐのか』(朝日文庫、2002年)の中でも、サンドラ・マッケイが、フセイン追放後のイラク国内の混乱を予測していた。本書の著者が指摘するように、言ってみれば誰でも予測できる事態だったにも関わらずなんら事前に妥当な政策は練られず、誰にでも予測できたはずの結果に今米軍は苦しめられている。現政権の政策決定過程のどこかに致命的な欠陥が存在していると見るべきだろう。
1章から4章までは正直なところ私は、なかなか理解が出来ず読み勧めるのに時間がかかりました。
でも、イラクの各部族は組織ではなくネットワークというつながりを持っていることなど興味深い記述も多く人間が作り出す社会というものについて考えさせられました。
私が最も興味深く読んだのは終章です。
イラクという国家の成り立ちを拾ってあります。イギリスがオスマン帝国を解体する際に作った国家だということ…激しい抵抗運動があったこと…日本とイラクの関係を作り上げて言ったのは日本企業であるということ…などなど。
現在も日本企業への期待は大きいと酒井さんは指摘しています。そして、自衛隊が占領軍とイラク人にみなされればこれまでの日本企業によって作られた関係は壊れてしまうだろうということも書いています。
この終章を読むだけでも価値がありますし、あとがきで映画『アラビアのロレンス』についての解釈もイラクを知る上で貴重な記述だと思います。
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