元来、数学者志望だったというオシムだが、
仮に文学者になっていたとしても
相当なところまで行けたのではないか、
と思いながら本書を読んでみたところ、
意外にもこんな一節に出会った(p.82)。
「だいたい私はものを書くことが好きではなかった。
学校でも作文は時間の無駄だと思っていたし、
それに手紙だって一通も書いたことがないのだから。」
この人の言葉は、あまり額面通りに受け取るとケガをするので(笑)、
このコメントもどこまで信じていいのかという気がしないではないが、
とりあえず、オシムの「自伝」ということになっている本書も、
書き下ろしではなく、原著者によるインタビューを再構成したもののようだ。
ローカルな話題が続く部分は決して読みやすくはないが、
ある程度の知識を持っている読者なら、
類書の中では最も写真が多いこともあって
(とくにp.43下の写真はセクシーだ)
かなり楽しめること請け合いである。
以下、興味深かったトピックの一部を挙げる。
・オシムはプロ意識が高く、現役時代、水曜日以降は
試合に集中するため、必ずひとりで自室で寝ていた。(妻アシマ談)
・現時点で、オシムはバルサを世界一のチームと考えているようだが、
02年当時は、マンUとファーガソン監督をかなり高く評価していた。
・オシムいわく、上下関係に厳しい日本人の行動様式から来るものか、
大きな個人的責任を担う場面で、自ら精神的ブレーキをかけてしまう選手が多い。
サッカーのように即興性が重要なスポーツでは、これは致命的な欠点になる。
最後に、2010年のW杯南ア大会が、
全て人工芝の会場で行なわれる予定だということは、
恥ずかしながら本書を読むまで知らなかったのだが、
「タックルが少なくなり、コンビネーションプレーが強調される。
技術的レベルが高いチームにとっては有利だ」という見通しを、
すでにオシムが立てていることについては、さすがと唸らされた。