この数年で企業の経営環境が大きく変わっています。未曽有の苦境に立たされ、新しい企業経営のありかたを模索している中で、出会ったのが本書です。
著者は、ブリジストンの研究開発畑から身を成して取締役として企業経営を経験してきた人物であり、研究開発マネジメントの第一人者である。それだけに、筆者の体験を語る冒頭には胸が打たれた。筆者は、在職中に何度も大きな経営危機を経験し、そこから学んだことは「暗いトンネルを抜け出した後には、それまでと異なるパラダイムに基づく新しい世界が開ける」という事実だという。そして、そのトンネルの先に出現する新しい時代を先取りし、新しい技術や商品を、他社に先行していかに早く準備するかがカギを握るのだと訴えかける。
ブリジストンでの技術経営の事例を取り上げて、技術経営理論がどのような形で活用されてきたかが分かりやすい形にまとめられている。ともすれば、机上の空論になりがちなマネジメント理論について、このような形で実例を交えながら、丁寧に解説している書は他に得難く、また、最新の技術開発の裏話から人の育て方に至るまで語る本書は、研究現場と経営の両方を経験してきた筆者でしか書けない深い内容を含んでいると思う。非常に良い本であり、是非お勧めしたい。