前作では破壊的な技術革新を受けて優位を脅かされる側の企業に置いていた視点を、今回はその技術革新で新事業を構築し、優位企業を打ち負かそうとする側に置いている。この「破壊される側ではなく破壊者となって」という立場が本書の特色である。そこでは技術革新にかかわる実務者にとって、より明快な行動指針が得られるだろう。実際に、どうすれば最強の競合企業を打ち負かせるのか、どのような製品を開発すべきか、もっとも発展性のある基盤となるのはどのような初期顧客か、製品の設計、生産、販売、流通のなかでどれを社内で行い、どれを外部に任せるべきか…というような、きわめて具体的な意思決定の「解」が提出されている。
「無消費への対抗」など、次々に展開される破壊的イノベーションの局面は興味深く、そこでのマネジャー個人の行動やモチベーションまでカバーする理論はマネジメントの視野を確実に広げてくれる。事例となる企業や市場は、IBM、ソニーなどの常連から「クイック・サービス型レストランチェーンのミルクシェーク」などまで多彩で読みごたえがある。日本企業に「破壊」される米国市場を取り上げてきた著者が言う、「日本の経済システムは構造的に新たな破壊的成長の波の出現を阻害している」という提起も示唆的だ。さらなる読解が期待できるテキストとして、また、イノベーションやマネジメントの指南書として必携である。(棚上 勉)
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本作品はその続編であり,前作が破壊的技術の脅威が身辺に及んでいることを警告する内容であったのに対し,破壊的技術をいかに味方につけて応用すればよいのか,しかもそれを組織のプロセスにまで組み込むには?という大変困難な課題に対する「理論構築」の書である.これが理論であることは著者自身が繰り返し述べており,勘と経験ではなく理論に基づく経営をしようという呼びかけはいかにも学者らしい.理論とはいえその内容は自身や同僚との長年の研究成果に基づく洞察と慧眼に満ちており,全ての経営者に読んでほしいと思わせるレベルである.
しかし破壊的技術が成功するのは極めてまれであり,それはとりもなおさず実践が生易しいものではないことを物語っている.この本を羅針盤にして新事業の海に漕ぎ出す者たちも多いと思うが,海図と現実の航海の差はあまりにも大きい.そのギャップを具体例をもって埋めていくのが現実世界の経営だが,その成功と失敗の実例を数多く知りたいものである.
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