前著「イノベーションの本質」がなかなか良かったので、新著「イノベーションの知恵」を読んでみました。
この本の特徴は、NHKでの「プロジェクトX」のように具体的な改善プロジェクトを取材しながら、その中から、イノベーションを起こすために必要な「考え方の作法」を導きだすというものです。
勝見氏が関係者の苦労話を語るドラマ編を担当し、一橋大学名誉教授の野中氏が解説編を担当するという構成になっています。
今回取り上げられた事例は、あの有名な「旭山動物園」、進学率を驚異的に上げた「京都市立堀川高校」、JR東日本「エキナカ」、トヨタ「iQ」、「銀座ミツバチプロジェクト」など9つの革新プロジェクトです。
どれも物語は面白く、さすがだなあと感心させられます。現場に密着して、諦めずに考え抜く姿勢。ふとしたきっかけで、新しい発想が生まれ、やがてそれがさらに一段高いステージに発展していく。
各物語には共通性があるように思いました。
是非、読んでおきたい話です。
しかし、残念な点は、野中氏の今回の解説は、やや抽象的でわかりずらい点。
読んでいて、事例と解説がすんなり結びつきませんでした。
「理論的三段論法」から「実践的三段論法へ」が重要だとあります。これは、アメリカ流にアタマで科学的論理的に考えるだけではイノベーションは生まれず、目的を達成するための手段を考え、実践を繰り返し、都度、仮説を修正することでこそイノベーションが生まれるということです。これは非常にわかりやすいです。
しかし、“「モノ的発想」から「コト的発想」へ”や“「名詞ベース」から「動詞ベース」で捉えよ”などは、説明が抽象的で本当にわかりずらいと思いました。
どちらも、見かけや従来からの固定観念でばかり見ずに、別の面から見て、違う姿に変わっていくもの、動いていくものとして捉えよということで、主張自体はそのとおりだと賛成です。しかし、事例を使った論の展開にはなにかコジツケが感じられ、この物語から読み取れるのはそんなことかなあと正直思いました。
解説が抽象的で難しく感じられる点はビジネス書としてどうかな?と思いますが、取り上げられた事例は、読む価値十分です。私は特に「堀川高校」の教育方法の改善と「社会福祉法人むそう」による知的障害者の能力を地域再生に変えるという2つのエピソードが心に残りました。