本書のテーマは、イノベーションを生むための新しいアプローチである。
著者の主張は、イノベーションの土台となるのは、顧客との協力関係と社外の経営資源の利用の2点ということだ。顧客をマスと捉えずワントゥワンで対応し、顧客と共同で価値を創造すること、そして、自社ですべてのことをやろうとせず、世界中に散らばる優れた経営資源を活用することでイノベーションが生まれるという。そして、それらを実現するのが、業務プロセスであるとし、業務プロセスの重要性を強調する。さらに、業務プロセスは、情報通信システムと密接に関係しているので、その導入の際の設計が鍵になるという。
これらの主張は、アメリカ企業や筆者らの出身国であるインドの企業の事例を通して解説される。
想定している読者は、経営者およびミドルマネジャーであろう。
顧客との共創やアウトソーシングの重要性については、これまでも多くの経営者・経営学者が主張しているので、あまり新規性がない。また、業務プロセスの強調についても、市場の分析や戦略策定に熱心で日常の業務プロセスに無頓着な米国企業の経営者には、インパクトのある主張かもしれないが、ミドルマネジャーが日々工夫しながら業務プロセスを精緻化している日本企業にとっては、「何をいまさら」といった印象である。
文章が冗長なので、「はじめに」と第1章、第2章、第8章、そして間の章は章末の「まとめ」を読んでおけば十分である。
「コア・コンピタンス」の著者であるプラハラードの著作なので、かなり期待して読んだが、正直言って期待はずれだった。もしかすると、実質的には共著者になっているクリシュナンによる単著なのかもしれない。私自身は、「業務プロセスを疎かにしてはいけない」という戒め以外に、ほとんど気づきが得られなかった。しかし、情報システム担当の役員やミドルマネジャーには示唆があるかもしれない。