日本人にはほとんど名を知られていないけれども、現地国では破天荒な存在として著名な、主にアメリカの20世紀の女性たちを取り上げた書です。
川本三郎の『
忘れられた女神たち 』(ちくま文庫)に触発されたと巻末にあるとおり大変よく似た構成で、一人当たり7ページ程度で総計20人の女性たちが取り上げられています。
その女性たちの大半が型破りであると同時にスキャンダラス。近づくと火傷させられるほど野心を熱くたぎらせています。
20世紀というまだまだ女性には過酷な時代にあって、そのとがった心と類い稀なる才能を武器に、彼女たちはそれぞれ特異な地位を築いていくのです。
人形を使った写真絵本『小さなお人形の物語』が今も復刻出版されているデア・ライト。
英国生まれだとウソをつき、年齢も詐称し、デザインも他人任せにしながらもテキスタイル・デザイナーとして一時代を築いたフローレンス・ブロードハースト。
黒人の父と白人の母の間に生まれ、アメリカでは黒人系として正当な評価を受けられなかったために、ヨーロッパに活躍の場を求めた天才ピアニスト、フィリッパ・スカイラー。
女性に活躍の場が与えられなかったジャズの世界で、死ぬまで男として生きたピアニスト、ビリー・ティプトン。
資産家たちと結婚と離婚を繰り返して築いた莫大な資産を投じ、一大庭園を創り上げたガナ・ワルスカ。
その攻撃的で自己中心的な言動が多くの人々を遠ざけることとなり、彼女たちの多くは寂寥感に押しつぶされそうになります。そして最期はことごとく孤独の中で死を迎えることになります。
トルーマン・カポーティの『ティファニーで朝食を』の主人公ホリー・ゴライトリーのモデルと目される女性コラムニスト、メーヴ・ブレナンが著作の序文でこんなことを記しているとあります。
「二十五年間ニューヨークにいるけれど、おしゃべりレディは自分のことを本当のニューヨーカーだとは思えない。名付けていえば、居留中の旅行者ってところね」(62頁)
小説『
Breakfast at Tiffany's 』(ティファニーで朝食を) には「Miss Hoiday Golightly, Traveling」という言葉が出てきます。それはメーヴ・ブレナンが言う「居留中の旅行者」という言葉と重なり合うものですが、この『イノセント・ガールズ』に登場する多くの女性たちが、自由でありたいと強く願いつつ、自由の代償として旅行者=異邦からの客人であり続けねばならなかった孤独を思わずにはいられません。
*ジャッキー・オーメスがコミック連載をしていた新聞の名前を「コーリア」と記述していますが、正しくは「クーリエ」(Courier)です。