かつて村上春樹が「読んだ人間八割に嫌われてもいい。残りの二割の人に人生の折に触れ何度も読み返してもらえたら作家としてこれほど嬉しいことはない」という趣旨の発言をされておられましたが、この絲山秋子の『イッツオンリートーク』は自分にとって、まさにそんな本です。この小説の優れた点は、男女の関係性を《友情》《恋愛》《性欲》の三つに単純化されて描かれているところです。当然全てが成立する人に出逢えることが出来れば素晴らしい人生を送れるわけですが、もちろんそんなことあり得ません。「お互いの距離を計りあって苦しいコミュニケーション」しながら主人公はどのように生き、そしてどんな答えに辿り着くのか。最後の言葉に、爽やかな感動を覚えずにはいられません。そのような二割の幸福な読者になれるかどうかは、結局この作者との相性次第ですが、是非とも多くの人に読んでもらいたい。お薦めします。