どこまでも青く澄んだ海と空、白い雲とまばゆい太陽のもと、地中海は多くの文化や国家の興亡を見守り、多くの歴史家や作家をも魅了してきた。本書は建築家の視点から、イタリアの諸都市を体感しつつ、その歴史的意義を見出す。
その地中海の中にぽつんと宝石のようにきらめくヴェネツィア、アマルフィ、ピサ、ジェノヴァの都市を逍遥しながら、それぞれの数奇でドラマチックな歴史を生き生きと描く。この地域に生きた明朗快活な人々は、古代地中海文化を引き継ぎ、イスラーム文明の影響を受けて、華やかな都市文化を花開かせ、そこからは高らかな人間賛歌がきこえてくる。ここに近代の精神がうまれ、イギリスやオランダなど近代を開く国々に世界史の主役の座を準備する。
これらの都市は、世界史的役割は終えて、いまではすっかり落ち着いた街並みをたたえているが、その歴史的意義を超えた魅力を本書は伝えてくれる。
ただし、興亡の世界史シリーズ全体での本書の意味付けがやや不透明である点でこの評価とする。