本書は、タイトルからして、歴史的イスラーム世界での「知の継承」を社会史的に扱った書籍なのだろうと期待して購入しました。しかし少し読み始めて、コーランやハディースがどうこうとあり、「イスラーム教には興味の無い部外者には関心が無い教義や神学の話か」という印象ができてしまい、長らく放置しておりました。しかし、同じシリーズの「
中央アジアのイスラーム (世界史リブレット)」を読んだところ、本書の社会史的エッセンスをうまく掬って読むことができるようになりました。
例えば、アッバース朝の版図内のイスラーム化の浸透は、全域又は地域毎の人名辞典が多数残っていて、そこから都市のイスラーム化度合いやウラマー層の台頭や活躍都市の解析が行えたり、モスクでの教育から、マドラサへの教育の転換の背景や両者の機能の相違、マドラサ普及の歴史など。
どうでもいいと思っていた法学諸派が、現在のイスラーム各国の統治体制や社会の在り方とかなり密接につながっていることも理解できました。イスラーム世界の歴史というと、少なくともオスマン・サファヴィー・ムガル以前は、(一般書では)政治・文化史の書籍が目立ち、社会史は少ないと思うのですが、今後増えていって欲しいと思う次第です。