イスラムといえば、無慈悲な殺戮の自爆テロが連想されます。しかし著者によれば、イスラムでは、「自殺」と「理由なき殺人」は、大罪として絶対禁止。その意味で自爆テロは、許されない。但しムスリムの共同体が存亡の危機にある時は、自爆テロは「殉教」また「ジハード」とみなされ、善行とされる。こうして自爆テロは、場合により二つの評価に別れます。しかし実際にテロが起こった時に、今回のテロは大罪なのか、或いは善行なのか。宗教指導者の意見が、出たことはありません。カリフが廃止され、最高指導者がいなくなったためです。
血腥さが拭い切れないイスラム理解に抗して、著者は、この宗教には、心を平安で満たし、傷を癒す力があると力説。神が定めた法では、人間には5行(信仰・告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼)の行為規範がある。心と共に外面の行為も規制される。コーランだけでなく、ハディース(教祖の言行録)、イジュマー(法学者による合意)、キャース(論理的推論の結果)により規範が導き出される。中絶などの問題では、法学派間でも意見が、異なることがあるそうです。この宗教の特徴は、規範に違反した場合でも、貧者に施しをするような償いをすれば許されることです。また、有名な旅人を親切にもてなすのも、宗教義務。嫌々でなく、見返りを求めず、これ見よがしでもいけない。一方歓待された方は、お返しはしない。但し親切でも、男性が旅の女性に案内を申し出た時は、危険。ムスリムでは、男性が、見知らぬ女性に路上で声をかけることは、絶対にないそうです。
イスラムが、西洋人など非ムスリムから偏見で見られ誤解される最大の要因は、イスラムの国家は世俗主義の国家ではなく、癒しの力と来世の希望を中心に持つイスラムの教えに従っている点です。しかしその教えに従う人が、世界で16億人もいるのです。本書で、他人をラハットにするムスリムの日常世界が、垣間見えたようでした。