超大国アメリカの官民挙げての支援をバックに、中東で孤立を続けるイスラエルの外交、国防や情報収集法を取材したルポ。
米国のあれほど親密な関係にもかかわらず、軍事同盟を結んでいないことを初めて知った。イスラエルはその強烈なロビイングパワーのみで対イスラエル政策を動かしている。資金調達パーティーの熱狂はすごい。兵士や戦死した兵士の妻がスターのように喝采を浴び、登壇し演説すれば5000ドル、1万ドルと寄付の手が挙がる。入植地に移住したアメリカ出身ユダヤ人訪問ツアーもあるそうだ。中東外交見直しを求める国家情報会議議長候補者に対し「反イスラエル」と中傷を繰り返して指名撤回に追い込む。ユダヤロビーの問題点を指摘した本
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1を出版したウォルトとミヤシャイマーにも取材し、ロビーでアメリカの中東外交が歪む現状を指摘する。
ホロコーストが原点にあるイスラエル国民は「誰も信用しない」から「やられる前にやる」意識が徹底している。本書にもあるが、北朝鮮の中東へのミサイル輸出の実績からテポドン発射も早くから予測していたという。また、余り取り上げられないイスラエル国内のアラブ人問題も興味深い。兵役義務がなく就職・居住で格差がある二流市民扱いだが、アラブ系はすでに人口の4割を超える。将来ユダヤ系と人口が逆転したら「ユダヤ人国家」の国是は揺らぐ。危機感を覚えるイスラエルは中国にまで移民を探しているという。
現大統領から、ロビイスト、入植者、反戦兵士など非常に手広くインタビューがされている。知らずに論じることを否定する訳ではないが、著者の言うように、中東問題という日本人には難しい問題は「暴力はダメ」だけでは解決しない。深く知ることで、より深く考えることが出来る。