マカオ返還前夜を舞台にしたイザベラ・リョンさん主演映画です。
静かな優しさと悲しみをたたえる女性を演じた台湾映画「刺青」の2年前の作品です。
役柄を実際のイザベラさんの性格に近づけるために、脚本を書き直したそうです。
逮捕が迫る腐ったろくでなし男が、いきなり現れた娘と名乗る16歳の少女との
共同生活によって、真っ当なろくでなしへと変わっていく物語です。
イザベラさんの美しい肌とスラリと伸びた手脚には、涼やかな少女の色気があり
ほっぺをリスの様に食べ物で膨らませ、パクパクかっ込む姿は愛らしく
酒をラッパ飲みし、酔っぱらって熱唱し、そして嘔吐し、タバコを吹かす姿にも
少女の魅力が表現されています。流れ落ちる鼻水さえも美しい。
幼さと達観が入り交じり、心に踏み入れさせないプライドと孤独が美しく
周りを振り回す奔放な少女の魅力に満ち溢れています。
男の苦しい心情を察した少女の「今聞く?それとも後で聞く?」と云う尋ね方や
逃亡の準備をまるで遠足に行くかの様にわざと明るくはしゃぐ姿に
繊細な思いやりが見て取れます。
奔放な少女を一途に思い、一切の見返りを求めず助け続ける実直な男子生徒を
作り手は突き放さず温かく扱っており、少女を見守る切なさを共有していると感じました。
メイキングの中で、実生活では父親を知らぬ環境で育ったイザベラさんが
母から渡された一枚の写真の中の父親に話しかけていたという
幼少のエピソードを涙まじりに語った後
涙を見せた自分を許せないかのように悔しがる表情に胸が詰まりました。
少女の切なくも美しく、ままならぬ在り方が凝縮した優れた少女映画であり
物語を悲劇にもハッピーエンドにも閉じ込めず、人生の開かれた可能性を肯定した作品です。