ナポレオンの活躍した時代に外務省という官庁ができるころから、今日のイラク戦争までのイギリス外交を、易しい筆致ながらディテールにもこだわって書かれた非常に優れた入門書である。この分野の日本で指導的立場にある佐々木雄太、木畑洋一の編であるが、細谷雄一、松本佐保、君塚直隆、後藤春美、橋口豊といった1960年以降の生まれのまさに第一線で活躍中の少壮史家たちが健筆を揮っている。この本を通じて、読者はイギリスに限らず「外交」という仕事の妙味や、アメリカの覇権や欧州統合のもとでイギリスが如何に独自の外交的地位を保っていくかという苦闘の跡を追体験できるだろう。人物や個別事象を掘り下げたコラムも楽しいし、付録も充実しており、年表と首相・外相リスト(こういうものは歴史書を読むとき存外便利なもの)のほか、文献案内にはその本の特徴を短文で付記してあり、本格的な外交史研究へ読者を誘うべく、文書館の簡単な紹介もある。日本のイギリス研究者の層の厚さを見せつけられた感じで、イギリス以外を研究するヨーロッパ研究者としては羨望を禁じえない。