第二次世界大戦、日本とイギリス、及びアメリカが開戦するまでの過程を、イギリス側の資料から丁寧に読んでいくというのが、この本の主軸である。
仏印を巡る日英、そしてひきずりこまれた米の対応の違い、その対応の違いを生んだ情報の違いというのは面白い。
初期は情報的に優位に立ち、交渉でも強気だった日本が、徐々にその優位をつめられ、結果的に情報で負け、現代の我々の眼から見ると無謀としかいえない日米開戦に「至らざるを得ない」状況になった過程は、今後の情報戦略にしっかりと生かすべきであろう。
しかし、そのイギリス側でも、日本に対する情報が的確でないばかりに、無用な開戦をしてしまい、結果的に植民地を失ったと云えるだろう。
九月にスターマー特使が来日して三国同盟の交渉を行っていた時でさえ、英外務省では日独間で同盟が結ばれるとは信じられていなかったのである。
という一文は、なかなかに興味深い。
現在の学校教育、社会での常識的な知識では、ドイツとの同盟、三国同盟はそんなあやふやなものではなく、それがあるゆえ、日本、ドイツはより枢軸国として「悪」を押し付けられているように思えるからだ。
その枢軸国を結びつける「日独伊三国軍事同盟」が、連合国側の重要な大帝国イギリスに「結ばれるとは信じられていなかった」程度のものであった。それほどに、あの時点で、どういう勢力図が描かれるかまだあやふやなところがあったというのは、さらりと書かれているが結構重要なことではないかと思う。
また、日米開戦はイギリスの意向であった。真珠湾攻撃を知ったチャーチルは、手を叩いて喜んだ、などという言が伝わっているが、それにも納得してしまうような文もある。
参謀本部や大蔵省は、対日制裁はまずアメリカが行った後、アメリカよりも控えめに行うべきで、その結果日本の矛先がアメリカに向くことを望んでいた。
結果として、戦中戦後通して、イギリスのこの作戦は成功したのだろう。
現在の日本で、反米的な言説を耳にしても、反英ってのはあんまり流行らないのは、経済的結びつきが薄いのもあるだろうが、結局のところこういう大英帝国様のお家芸イメージ戦略、インテリジェンスの勝利ってことなのではないでしょうか。どうでしょうか。
まあそんなイギリスの戦時中の動き、そして日本が「何に」負けたのかが良く分かる一冊である。