この巻では国繁死の対象になった女性が小学校に入学する児童と父母の前で、児童の一人を人質にとって国繁制度の非合理を訴えた。それによって父母達は国繁制度を自分達の問題として考える動きを見せた。
また、この国の欺瞞も明らかになる。この国では軍隊を持たず、同盟軍が防衛を担う仕組み(安全負担条約、安負条約)になっている。この安負条約によって国民が戦争から解放されたことが、生命の価値を再認識させる国繁制度の導入理由になっていた。
この巻では領土紛争を抱える連邦との緊張が高まり、ミサイルが撃ち込まれる。本来ならば安負条約に基づいて同盟軍が応戦するが、同盟軍は中東派兵で手一杯で心もとない状況である。そこで国繁警察が極秘で拘束中の退廃思想者(国繁制度に反対する思想を持つ者)を徴兵し、支援部隊に動員しているという噂を藤本は耳にする。国繁制度の根幹と矛盾する動きに藤本は激しく動揺する。
死までの残された時間をどう生きるかという個人レベルのドラマから、国民に理不尽な死を強いる国繁制度の是非、さらには国家権力への抵抗運動へと物語の方向性の転換点となった巻であった。(林田力)