作者病没のために絶筆となったしまった長編野球小説です。
山際 淳司さんはノンフィクション作家さんで、たまに短編なども書かれていたのですが、長編、しかも題材が野球ということがとても珍しく、嬉しく、楽しく感じました。
メジャーリーグに携わるオールドプレーヤーやオールドスカウト、チームメイトやオーナーなどの登場人物たちが人間味にあふれていて暖かい。ここにはアメリカ野球の爽快さや、快活さ、抜ける青空のような気持ちよさがあります。
この小説を読んで古代中国の諸氏百家の思想「性善説」を思い起こしました。人と人とのつながりの素晴らしさ、そしてそれを大事にすることはいつの時代でもどの国でも関係なのかな、と感じました。
登場する父と子、田島光と佐々木幸一の描き方や空気感がすごく上手でした。変に粘着質でべたべたせずに、かと言ってドライすぎもしない。この絶妙の距離感を情感豊かに描いています。
また、「父」としての在り方や考え方といったものを考えさせられました。男として、男にしかわからないもの。そして男と男に通じ合っているもの、そういったものをキャッチボールのように伝えられ合うことのできるようになりたいな、と感じました。