イエス・キリスト。神であれ救世主であれ、はたまた紀元一世紀に生きた一人の貧しいユダヤ人であれ、人類史上、この男がもっとも大きな影響をおよぼした存在であることに異論をはさむ者はいないだろう。そのイエス・キリストの生涯を考古学者・聖書学者であるジェイムズ・D・テイバーが解明する。古代の文献や物証をひとつひとつ当たっていくその態度は誠実で、緻密だ。
とくに、イエスの生涯最後の数年間については、比較検討できる文献が多く残っているため、論拠が明快で、著者の主張や推論を読みながら興奮が抑えられなかった。事実と推論がきっちりと分けられているのも説得力がある。また、推論が含まれていても、最後の晩餐について、イエスの埋葬について、その後の原始キリスト教の発展など、当時の社会背景をよく伝えながら、精緻に組み立てられていく理論には、膝を打つことまちがいなしだ!