「アンナと過ごした4日間」で返り咲いたイェジー・スコリモフスキの60年代の傑作のBOX化。最近のポーランド映画特集で上映される以外は観ることができなかったが、やっと観ることができて感激。今回はスコリモフスキ自らが演じたアンジェイ3部作。スコリモフスキが反逆児と呼ばれる理由が良く分かる。ポーランドの厳しい背景を理解できていないと分かりにくい部分はあるものの、逆にこの作品群を通してポーランドの真の歴史を観ることもできる。
【身分証明書】
出だしのビルの壁に映る大きな影は、一種ハードボイルド性を期待させる素晴らしい映像だが、ストーリーは大学を中退し兵役につくまでの16時間を描いたアンジェイの最後のあがきのような脈絡のないストーリー展開になっている。しかし、これはヌーベルヴァーグのオムニバス「パリところどころ」におさめられているジャン・ルーシュ監督の「北駅」を彷彿させる日常の切り取りとなっており絶妙。アンジェイをめぐる女性を一人三役で演じるエルジュビェタ・チェジェフスカの演技が印象的。
【不戦勝】
冒頭の列車の窓からのぞくアンジェイの姿が一瞬にして反転する驚きの映像からグッとひきつけられる。その後もラジオの独白を人物のクローズアップに重ねる構図や手持ちカメラの躍動的な長回し等映像の遊びを十分堪能できる。
それだけでなく、ポーランドの体制側の女性のプライドとそれを見つめる主人公の気持ちが上手く対比された最高傑作だと思う。私としてはこの作品が最高に好きだ。
【手を挙げろ!】
本編は60分弱で同窓会後の貨物列車の貨車での男4人女1人の一晩を描いた作品で、当時ポーランドで上映禁止になりその後スコリモフスキはポーランドを離れる。本編の前に1981年に追加された映像が25分ある。本編はスターリン主義期を回想しつつ自らの取った行動や現状を対比させながら問題提起する作風をとる。この作品だけカラーでシーンによってベースとなるカラーを変えた面白い映像を観ることができる。
問題となった4つ目のスターリン像のシーンは刺激的。しかし、本編前の追加された映像は必要だったのかは疑問だ。