The Verve―ロックの火が消えかかっていた90年代、英国ロックシーンの最前線に彗星のように躍り出て、そしてはかなく消えていった、ロック史における伝説の数々の一端を担うバンド。フロントマンは、90年代英国ロック界最大のカリスマ・Richard Ashcroft―稀代のソングライティングの才とド真ん中直球勝負の歌詞、そして唯一無二の錆びた重低音のヴォーカル。みずからの脳内に渦巻くサイケデリアを音楽という言語を用いて芸術に昇華し、なおかつ彼の歌は全世界の大衆から圧倒的な支持を集めた。
本作「アーバン・ヒムス」は、The Verveの三作目。一度はメンバー間の不和から解散したバンドがドン底から蘇り、まさに魂の奥底から明日への希望を高らかに歌い上げた、イギリスで14週連続1位達成という奇跡の一枚。
一見不規則に聞こえる音の配列から成る、特異でクールで美しいメロディが聴く者を虜にする。緻密に計算された音の洪水が脳を侵すノイズロックに、シンプルに鳴らされるアコースティックナンバーが続き、ストリングスを駆使した壮大なアレンジが叙情的だ。アルバムとしての完成度は群を抜いている。
全編を通して、ここに歌われるのは明日への希望だ。強者が弱者を飲み込み、人びとは日なたにいるものと日陰で暮らすものに二分される、それが都市であり、このアルバムは地べたにはいつくばってでものし上がる事を夢見る若者たちの歌だ。音に身をゆだね、明日へ飛翔せよ、すべての楽曲の全てのパーツが、聴くものにそう語りかけてくる。