本書の存在を知ったのは、2011年に東京・六本木の国立新美術館で開催された企画展「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」のミュージアム・ショップに置かれているのを見た時でした。
「ヘンライ」という変わった読み方の著者名は全く知りませんでしたが、調べてみると、美術界では古典的名著と呼ばれている−−との情報を得ました。
本書は、じつに格調高い文章で構成されています。
美術に関する書物ですが、本編には、「絵」は一切出てきません。
「言葉」を尽くして、美術とは何かを論じているのです。
私自身は、画才があるわけでもなく、絵筆を握ることもないでしょう。
でも、年に数えるほどですが、展覧会に出かけることもあります。
そのような「万年鑑賞者」でも、大いに納得できるのが、本書。
美術を志し、作品を仕上げようとする者が、どんな気持ちで臨んでいるのかを知らせてくれる書物です。
「美は見る者の心に生まれた快楽の感覚である」−−という言葉が事実であるなら、美術作品を「創る」ことはできなくても、「美」を感じ取ることは、誰にでも可能なはずです。
美術の世界に生きる者でなくても、「良き鑑賞者」にはなれる−−そのような主張を本書から感じ取りました。
さて、そんな「格調高い文章」の良書であるのですが、各ページ2段組みで40ページほどの「解説」が最後に載っています。
著者の生涯を綴ったちょっとした読み物になっているのですが、ここが「微妙」。
名前さえ知らなかった著者の「生涯」を知ると、「文章から受ける印象」とちょっと違う気がしました。
文章の格調高さに比べ、実物像は、俗物的というか、文章に偽りはないのですが、実際より「うまく表現され過ぎ」とでもいいましょうか…。
「作品」と「作者」は別物なので、そのことで本書の質が貶められる訳ではないのですが、あまり作者の実物像は知らない方が良い場合もあるのかもしれません。