この本は商品説明に書いてある、横浜トリエンナーレ2008の公式報告書ではない。参加したボランテイア達の立場からの報告書である。
この本で注目すべき事は沢山ある。まず、このアート展が単なる「国際展」(略称・本展)のみではなく、幅の広い市民の芸術活動の集合体であったことがわかる。そこで何があったか、ということが本書で初めて少々分かった。
中心として述べられているのは、「本展」の中身ではなく、「本展」でのボランティアの活動についてである。参加者のボランティア生き生きした体験が良く出ており、ボランティアへのお誘いにもなっている。
しかし本書の眼目は其処ではない。この本を良く読むと、現実のボランテイア活動がどういう問題をはらんでいたのか、と云うことが見えてくる。ボランティアは「参加した、やった、よかった」などで簡単に済むわけではない。その点でこの報告書は主催者にもボランテイア達にも目を向けている。普通、報告書は自分たちの良かったことが殆どを占めるが(特に公の報告書では、それが当然となる)、ここでは、その良い点も悪い点も述べ、あまり隠したりはしなかったようである。特に座談会や最後の細かい字でびっしりと書かれたボランティアの感想部分を読むとそのことがわかった。彼等はこれらの問題の指摘を通して、次回の展覧会をより良くする方策を考えようとする。「神は細部にあり」だ。細かい所を注意深く読むべきだと思う。
もちろん、問題点もっと整理した方がわかりやすかったとか「国際展」にしては外国人の感想や意見がない(海外のアートボランティアのことも知りたい)というような事もある。だがそれは瑕瑾だ。
日本にボランティアが登場して、まだ日も浅く経験や方法も充分に形成されているとは言えない。ついでに云えば理論もまだ上手く形成されていない。ましてやアートボランティアはもっと少ないと思う。もっと多くの経験と問題解決の蓄積が必要だろう。アートボランティアも、この所各地で開かれている国際展から各美術館で行われている活動まで様々なものがあり、問題もそれぞれであると思うが、本書は必ず、ボランティア参加の人にも、NPOにも、行政側にも参考になると思う。