ロード・オブ・ザ・リングやハリー・ポッターの上映によってファンタジ
ーブームが起こり、アーサー王の本においても小さなブームが起きました。
そのおかげで続々とアーサー本が発売されましたが、最近は下火になった
ように感じます。
この本はアーサー王の話にマッチするビアズリーによる挿絵と、
503章にも及ぶトマス・マロリーがまとめたアーサー王の話。様々な人物が
編んだ物語(散文)を、一貫したストーリーにまとめたものです。
日本語で通して全部読めるのは、このシリーズのみとなっています。
日本語で読みやすく、資料としても貴重なものだと思います。
最終巻である5巻まで揃えると、1865ページもの膨大な量を読むことに
なりますが、はまると読み終えるのがもったいなく感じるのですから
不思議なものです。剣と鞘を装備すると、ほとんど不死身に近い能力を得る
ことができる有名な「エクスカリバー」はアーサー王の持ち物。もちろん本書
に登場します。
■アーサー王自身に関する話の概要・・・イングランド全土を治めた大王ウーゼルが美しいと評判の女性イグレインを招くため、その夫と共に呼び寄せる。マーリンの助けを得て、貞淑なイグレインと床を共にし夫を殺すことに成功、アーサーがイグレインの胎内に宿る。ウーゼル王は間もなく病に倒れ死んでしまう。イグレインには元々3人の娘がおり、このようなことがあった為に、特に末娘のモルガン・ル・フェイは異常なまでにアーサーを憎むようになる。以後、彼女らがアーサー最期の時まで不倶戴天の敵として、彼を陥れようとする。また、アーサーはそれとは知らずにイグレインの長女・モルゴースと肉体的な関係を持つ。彼女の胎内に宿った生命はアーサーを憎むように育てられ、長じて優れた、災厄をもたらす者となり、やがてアーサーの世を破滅へと導くことになる。
(大きな筋書きとしてはこんな感じですが、実際はアーサー配下の半神の騎士・特に円卓の騎士に関する話が内容の大半です)
淡々と語られる物語が、まるで起こった歴史をそのまま本にしている
ようで、リアリティがあります。
様々な登場人物の数多くの幻想的なエピソードには時間軸があり、
ある話が進行していっても完結するところまで行かずに、別の人物の話に
突入してまた前の話の続きに戻る手法が多用されています。これによって
リアルタイムでストーリーが進行している感覚が生まれます。
相当昔(500年以上前)に出版された本の邦訳ですから、この世界観や表現の仕方に慣れ
るには多少ならずとも時間が必要でしょう。
まず最初は、ローズマリ・サトクリフの「アーサー王と円卓の
騎士」を読むことをおすすめします。こちらは不可解な記述を
サトクリフなりに辻褄が合うように改変させ、間口を広くしています。
また、ストーリーの同時進行が少なく、登場人物も限定している上に
わかりやすいです。入門に適している上に内容もかなりしっかりしてい
ます。それでアーサー王の話が面白い!と感じたら、本書を手に取れば良い
かと思います。
多くの人物によって作られた物語がやがて登場人物たちが自ら意志をもって自分
たちの物語を紡ぎ始めた、そんなパワーのようなものを感じるエピソード集です。
また、さらに古代の香りがする「マビノギオン」も併せてお勧めします。
こちらもアーサー王とその騎士達が活躍する、より原始的で象徴的な物語です。