1984年イギリスの児童文学作家アーサー・ランサムの生誕百周年を記念して出版されたロシア昔話集の日本では19年振りの新装版です。本書に入っているお話は作者がロシアへ行って言葉を学び収集した昔話を英語に翻訳された物ですが、そのままの形ではなく物語をふさわしく語ろうと自分なりに工夫したり結末を少しだけ作者好みに変えたりと出版までには随分ご苦労されたそうです。全11編の物語はどれも基本的にはめでたしめでたしで終わるおもしろいお話ですが、それだけでなく悲しみが胸に迫り人として反省を促され深く考えさせてくれる物語もあります。『鳥とけものの戦争』些細な諍いがきっかけで鳥たちの王様火の鳥とけものの王様クマが種族の代表として戦うお話です。『白鳥の王女』王子が捕まえた白鳥が乙女に変身するお話です。『オメリヤとカワカマス』末っ子のオメリヤが川で捕まえたカワカマスのお陰で魔法を使って幸せになるお話しです。『高価な指輪』高価な指輪を持った妹が巨人にさらわれ3人の兄が指輪目当てに追いかけるお話です。『キツネ話』世界中で一番ずるがしこいキツネの3つのお話です。『貧すれば貪するという話』貧しい老夫婦が不思議な老人に金貨を出すおわんを貰ったのに貪欲になり失敗するお話です。『小さな家畜』繁盛しない宿屋の若者が旅の老人に親切にして助けられるお話です。『ジプシーと聖ジョージ』貧しいジプシーが聖ジョージに生きる術を乞うお話です。『天国のかじや』善人のかじやが天国でこの世の悪を知らされ苦しむお話です。『兵隊と死神』兵隊が乞食に施しを与えたお礼に全能の力を授けられ不死者になりますが、やがて死にたくても死ねない皮肉な運命が待っています。『二人の兄弟』弟が死んだ兄に会いたいと望んで地下の国へ行くお話です。どのお話にも作者の温かなまなざしが感じられる素晴らしい本ですので、ぜひ家族で長く読み継いで頂きたいと思います。