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『パンの大神』や『内奥の光』、『白魔』に共通しているのは、生来の気質か或いは人工的な処置によって、通常の人間の目からは隠された深秘の世界を瞥見することになった女性達が登場すること。彼女達を巡って、堕落と法悦の境地が渦巻く。『輝く金字塔』では、或る娘の失踪事件や謎の暗号に絡んで、古代より生き残った悪しき矮人の伝説が現代に尚息づいてみせる。『生活の欠片』は、或る平凡な男のつまらない日常が、何時の間にか或る古文書を通じて神秘主義と混淆して行く様を描いているのだが、平井はこの主人公を「覚醒せざる文明忌避者」と評し、この作品を自分の好みの埒外だと思うなら、その人はマッケン文学の真の愛好者ではない、と大変な入れ込み様である。何れも自然の摂理の奥深くに潜み棲む妖異の影が、怪しい隙間からガバッと現実に襲い来り、その背後に広大な暗黒の領野を望見させる怪作ばかりである。
平井呈一の訳は仲々の名調子。巻末の解説も訳者によるもの。またこのレビューのタイトルは各巻ボックスの背表紙から。尚『パンの大神』は、創元推理文庫の『怪奇小説傑作集1』で、また『輝く金字塔』は平井訳ではないが国書刊行会の同名書でも読むことが出来る。
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