まず、当著のタイトルとなっている「アーカイブズ」とは、両義的だが「公文書を含めた多種多様な分野の記録資料、さらにそれらを収納する施設を指す」(本書p.11)。一般的には、国の「国立公文書館」や都道府県等が設置する「文書館」などがイメージされるだろう。今年5月に国立公文書館が作成した「全国公文書館関係資料集」によれば、こうした施設は、国が4館で、あと30都道府県、7政令市、18市町村に設置されているようだ。ここで興味深いのは、国立公文書館の設置が1971(昭和46)年であるのだけれども、日本初の「公文書館」は、1959(昭和34)年に山口県で誕生していることで、この辺りの経緯も当著に記されている。ちなみに、私の住む北海道は全国で10番目に文書館が設立されている。
ところで、北海道立文書館は1985(昭和60)年、重要文化財である「赤れんが庁舎(北海道庁旧本庁舎)」内に開設されたが、この文書館開館に当たっては、同年4月から施行された「北海道立文書館条例」が設置根拠となっている。一方、国立文書館の場合、確たる法的な位置付けがなされたのは1987(昭和62)年、議員立法により成立した「公文書館法」であった。それまでは、残念なことに「文書行政の面で日本は「世界の後進国」であった」(後掲書p.2)と言い得たのだ。とりわけ、「公文書館法」成立などに至る、茨城県知事でもあった岩上二郎参議院議員(1913~1989)の尽力は特筆すべきものであり、同氏の著書『公文書館への道』(共同編集室,1988年)は「公文書館」を語る上での必読書と言えよう。
それはそれとして、当書では「アーカイブズ」に関する民間企業や地域などの様々な取組を、バランスよく紹介、解説しているのも特徴だ。そこを貫く“理念”は「記録を守り 記憶を伝える」(2002年の国際シンポジウム・タイトル)ということと、「地域の記憶を 地域の記録に」(北摂アーカイブズ)というものだろう。そして、「地域」を「企業」と読み替えてもいいかもしれない。企業関係では、厳しい環境に置かれている「東京電力(電気の史料館)」や「日本航空(日航アーカイブズセンター)」などを取り上げているが、当該のアーカイブズから得るものは決して少なくないと考える。アーキビストの養成やデジタル・ジレンマ、加えて《3.11》で露呈したバックアップの問題など、課題は山積するけど、前に進めようではないか。