パニックスマイルの、しっかりしたアルバムとしては七枚目らしい。長年続いたメンバー四人でのラストアルバムは、しかし流石の完成度と、妙にポップに振り切れたサウンドと従来のパニスマらしさが不思議に交錯する不思議な一枚となっている。
ポップというのは、まずバンドリーダー・吉田氏が何曲かで朗々と歌い上げているところが挙げられる。二つの『GIRLS ON FLOOR』(もはやメロウなヒップホップ!)を筆頭に、『The Electric Sea』(これなんかスーパーカーっぽくさえ思える!)や『Surfer Girl』の、そりゃ変ではあるけどでもしっかり「歌」している感じや、従来のパニスマらしさの中にも勢いに乗ったポップさが散見される。またポップさは演奏にも及び、彼等らしい不穏なジャンクサウンドと、意外と王道然としたオルタナロックサウンドが不思議に絡み合っている。彼等の場合出自がハードコアであるだけに、「ポップになることがかえってその捻くれ具合を高める」ことになっていて興味深い。少なくともこのポップさはシニカルさを強烈にブーストしているように思える。9分近くに及ぶ『Siren』などは「これパニスマ!?ソニックユースじゃね!?」みたいな怒濤の展開で、しかもしっかりパニスマな名曲。
一方で歌詞は、ジャケットのキラキラしたピンク色が表すようなデパート的オシャレやら、ケータイやパソコンで連絡を取ったり遊んだりやら、ファミレスでだべってたりやら、ゲーセンでランデブーやら、要するに「都市の享楽を快活にエンジョイする若者たち」に対する、オッサンのグチすれすれの(笑)、しかし刺々しさに満ちた強烈な皮肉で溢れている。しかもそんな中において「今の気分も悪くない」(『The Electric Sea』)と歌うところなどはかえってタチが悪い(笑)
長年のメンバーの最終作として、このようにポップでメッセージフルなアルバムをつくった吉田氏、これから果たしてどうするのやら。何もしないことは無いだろうけど、この後どういう方向にサウンドの舵を切るのやら。