キャスリーン・バトルは、小柄で声量も大きくなく、技術にたよるというソプラノではありませんが、その透明で凛とした美しさを感じさせる声は万人に愛される特徴を持っています。バッハのカンタータやヘンデルのオラトリオのアリア等、宗教曲の持つ荘厳さと敬虔さをその素晴らしい歌声から感じ取れます。
ヴォルフの「メーリケ歌曲集 眠れるみどり子イエス」の歌唱のように厳かな気持ちが感じられる歌唱は特に彼女の魅力がでています。コンサートホールではなく、教会の中で聴いているような雰囲気を持った歌唱です。
モーツァルトの「証聖者の盛儀晩課 第5曲 すべての国々よ,主をたたえよ」にも、厳粛で真摯な気持ちを感じ取りました。絹糸のように細くて艶やかな声によってこそ、モーツァルトが伝えたかった音楽の本質が理解できると思いました。
マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ~アヴェ・マリア」は絶品です。彼女でないとこのような清楚なイメージは表現できないと思います。リリコ・レジェーロの声質を持つソプラノのお手本のような情感溢れる歌唱でした。
フォーレのレクイエムの「ピエ・イエズス」は十八番ですね。バッハ&グノーの「アヴェ・マリア」は、ただただ聞き惚れました。
一番感動したのは、「わが主が磔にされし時,汝はそこにいませしか Were you there」でした。現実の深い悲しみとそれを昇華した先にある希望とを切々とした歌唱にのせたスピリチュラルの名曲です。ア・カペラですので、より敬虔さがましているように感じました。これぞ名唱です。