今マーズ・ヴォルタほどうらやましいアーティストはいないのではないだろうか?
あれだけ革新的で独創性に満ち溢れた音楽を創りながら、それと同時にじゅうぶんなセールスもあげているのだから。
革新的で独創性に満ち溢れていると言えば聞こえはいいが、それだけ難解で理解しにくい。ということでもある。当然、そういったものはセールス的には芳しくないというのが定石である。
音楽面での革新性とセールス面での成功を共存させている理由はなんなんだろうか?
たぶん彼らの音楽が「難解で理解しにくい音楽」ではなくて、「難解だが理解したい音楽」なんだろうとおもう。
一回聴いただけではなにがなんやらさっぱりなのだが、その一回目がくせ者だ。なにがなんやらわからないのだが、わからない分その音に詰め込まれたエモーショナルな部分というか、パッションというか、そういったものだけがビシビシと伝わってくるのだ。
そういったものを嗅ぎつけてしまうと、もう一度再生ボタンを押さずにはいられなくなる。そして二度、三度と聞き込んでいくうちにスピーカーから流れてくる一音一音に意味があるんじゃないかとまで思えてくる。
今うけているロックの現状はといえば、できるだけ曲はコンパクトにまとめて、余計なものはできるだけそぎ落としていき、その中で個性を発揮できるアーティストがうけているのだが、マーズ・ヴォルタはその真逆である。
アイディアを圧縮させるのに必死になっているアーティストを横目に、マーズ・ヴォルタだけはアイディアというアイディアをどこまでも膨張させようとしているのだ。そしてそのアイディアの膨張を加速させているのは、彼らの根底にあるパッションなんだと思う。
彼らの音楽はけっしてダンス・ミュージックとして機能することはない。しかし、普通のアーティストとは桁違いのパッションとアイディアをもったマーズ・ヴォルタは永遠に膨張を続ける世界を僕たちに見せてくれるはずだ。