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アンナ・カレーニナ〈4〉 (光文社古典新訳文庫)
 
 

アンナ・カレーニナ〈4〉 (光文社古典新訳文庫) [文庫]

レフ・ニコラエヴィチ トルストイ , 望月 哲男
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

「そうだ、死ぬんだ!…死ねば全部が消える」。すべてをなげ捨ててヴロンスキーとの愛だけに生きようとしたアンナだが、狂わんばかりの嫉妬と猜疑に悩んだすえ、悲惨な鉄道自殺をとげる。トルストイの代表作のひとつである、壮大な恋愛・人間ドラマがここに完結。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

トルストイ,レフ・ニコラエヴィチ
1828‐1910。ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア正教会破門の措置は、今に至るまで取り消されていない

望月 哲男
1951年生まれ。北海道大学教授。ロシア文化・文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 434ページ
  • 出版社: 光文社 (2008/11/11)
  • ISBN-10: 4334751709
  • ISBN-13: 978-4334751708
  • 発売日: 2008/11/11
  • 商品の寸法: 15.4 x 10.6 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By cobo
形式:文庫
有名なフレーズ『幸福な家族はどれもみな同じように見えるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある』ではじまる大作です、いつかチャレンジしてみたいと思いつつ、なかなか手が出なかったのですが読んで良かったです。正直かなりの素晴らしい未完成の持つチカラ強さと、計算されたといいますか確かな技術に裏打ちされた完成度の2つの相反する良い所を取り込んだ総合小説と言える作品です。

19世紀のロシア。オブロンスキー公爵(アンナの兄であり、役人である上流階級に属する人物、ひどく物分りが良いが自身の欲望にも忠実な憎めない男)とその妻ドリー(何人もの子供の世話に追われる家庭的な世俗的で頭は良くないかもしれないが平凡な女)の家庭の不和が起こっているところへやってくるアンナ(立ち振る舞いも美しい美貌の持ち主で、教養もある女性、役人であり出世もするかなり年上の大物官僚カレーニンの妻)がやってくるところから話しが動き始めます。ドリーの妹で可愛らしい女キティと、キティに心奪われた地方貴族でもうひとりの主人公リョーヴィン(人の良い男でオブロンスキーとも仲の良い男、だが煮え切らない部分もあり、熟考したあげくでないと行動に移せないが、それでいて頑固もの)、そしてキティが求めるヴロンスキー伯爵(軍人であり男気あふれ、そして情熱的男、乗馬の腕も良いハンサム)、など様々な人々を交えながら、たくさんの物事を扱い、そして追求し、なお読み手に解らせる総合小説です。様々なものを扱いながら、そのどれもおろそかにしないテクニックと、読み手を'んで離さない吸引力はとても強く、そして上手いです。ただの恋愛小説と考えていたのではない、素晴らしい作品でした。

人間関係における様々な事柄を(恋愛も、親子関係も、兄弟も、子供への教育から、当時の政府や皇帝への時事関係への解釈、収入の話しや、借金のこと、宗教的家族背景から、哲学的人生の指針まで!それ以外の些細な日常的問題など、など)扱い、それを2つの大きな流れである、都会的上流社会における情熱的、破滅的恋愛関係であるアンナの流れと、地方の地主貴族で頑固で、表面的事柄を軽視しながらも現実的世界との交渉を絶えず繰り返すことになるリョーヴィンの流れを交差させたり、対比させたり、人物をそれぞれに絡めることで浮かび上がらせ、作中の人物の心の動きをリアルになぞることで読み手に納得させ、しかも読み手それぞれが解釈できる作りになっています。とても多層的で多角的で様々な角度から見るに値する構造になっていて読みでがあります。

いわゆる一般に浸透している不倫恋愛小説としての面も、たしかに面白いですし、それはそれとして理解できますが、あくまで上流階級の中の日常の中で起こっている出来事、その普遍性や凡庸さとも言うべきどうしようもないこの世界や日常を感じさせつつのドラマになっていて、その部分のブレンド具合が私個人にはとても気に入りました。アンナの結婚生活における希望や期待と現実とのギャップ、それでも成り立たせようとするアンナの努力の数々、しかし知り合ってしまって恋愛関係に至る相手ヴロンスキーとの出会いや関係、そして上流階級社会からの反応など、女性ならではの興味深い内容目白押しですし、こちら側がドラマになりやすいのも良く解りますし、読んでいて面白いのですが、なお素晴らしかったのはリョーヴィンの流れの部分です。

アンナと違った意味で正直で納得しなければ頑として動かない男、何か根源的渇きの様なものを心に偲ばせながら生きている不器用で正直すぎる男、しかし、その思索の辿る道が、とても人間的で、凡庸で、そしてかけがえのないひとつの命のような素晴らしさを感じさせます。そのうえ、こういう事はどなたでも体験があるのでしょうけれど、自分の中で何か特別な契機があった後に見る、何気ない普段と変わらない世界が、目に写る何かが、とても特別で愛おしく、そして忘れられない風景になることを思い出させてくれます。そんな部分への伏線、比喩、描写などがたまらなく洗練されていて素晴らしい、古典とは時間が経過した後になっても充分鑑賞に堪えうる存在なのでしょう、と実感させてくれます。アンナに対比する人物としても、とても良かったですし、リョーヴィンの兄で刹那的ニコライ、異父兄で著名な文筆家でもありながらどこか割り切れないコズヌィシェフとの関係や、議論の数々の落としどころが、今でも充分通用する感覚で、その辺もまた良かったですし、違う訳者のものを読んでみたくさせます。

個人的には7章で終わっても良いところに、8章があり、それでもなお時間は経過し、すべてが流れ去ってゆくこの最後の8章の存在が、強く私には特別な小説に感じられました。変な例えですが、「グレート・ギャッツビー」の最後の文章に近い余韻があってそれを短いセンテンスではなく、一つの章として存在させている感があって素晴らしかったです。

厚めの本でも割合躊躇なく読み始められる方ならすぐにでも、読書の経験があまりない方なら、何かキッカケがあったなら是非オススメしたい、総合小説でした。
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