映画『ブレードランナー』の原作として知られている、フィリップ・K・ディック1968年発表の傑作長編。著者は1982年、53歳で亡くなった。皮肉にもこの年に公開されたこの映画作品により、彼は一躍スターダムにのしあがることとなった。
ディックの作品には、SF小説でありながら、登場人物の人間関係、恋愛、家族のきずななどが見事に盛り込まれている。この物語も単なる賞金かせぎとアンドロイド8人のバトルで終わってはいない。人間とアンドロイドの違いを通して、人間とは何かを考えさせられる作品だ。(石井和人)
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5つ星のうち 5.0
生命とは何か?,
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レビュー対象商品: アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229)) (文庫)
この本の解説などを読むと、「人間とは何か?」というのがこの小説のテーマだと言います。でもよく読んでみると、むしろ「生命とは何か?」といった方がしっくりきます。 ディックは明らかに「他者との共感」が、人間とアンドロイドの違いであることを示していますが、他者とはここの登場人物たちを見る限り、動物や(なんとアンドロイドまで)含めた「生命」であるようです。「生命の大切さ」などというお説教じみた内容ではなく、生命が死に絶えた世界の中での、「生命への狂おしいまでの愛」が切実と伝わってくる本です。 例えば、あるアンドロイドがクモの足を面白がって切ってしまいます。そのことに激しく衝撃を受ける登場人物がいます。 それをディックも分っていたのか、作中「他者との共感」を現実化させるSF的道具であるマーサー教が、アンドロイドたちによってインチキだと暴露されます。 でも最後に作者の祈りが描かれます。絶望した主人公のリック・デッカードはインチキであったはずのマーサーと、最後に一体になる体験をします。それでも「共感」はあったのです。そしてそこで見つける絶滅したはずのヒキガエル。絶滅したと思っていた種を見つけた時の激しい人間の喜び。そのヒキガエルにもまだ話しの続きがあるのですが、そのまま感動的で美しいハッピーエンドへと終結していきます。 作者ディックの論で言えば、現代の我々は生命のないアンドロイドなのに違いありません。もしなんとか人間でいたい、生きていると信じたいと思ったら、まずこの本を読んで身につまされるところこから、始めたらいいと思います。
52 人中、42人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
人間には最後に、何が残るのだろう,
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レビュー対象商品: アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229)) (文庫)
核戦争後の地球。そこを捨てて火星に逃げ出していく地球人たち。人間には最後に何が残されるのだろうか。 作者はそれを「共感」とし、共感の究極を宗教に求めた。 マーサーの行為はイエスの十字架への道をなぞっているし、 彼の発言は「見よ、世の終わりまで、あなた方とともにいる」という イエスの発言を焼きなおしている。 浅倉氏の訳は小気味良く、村上春樹氏が、自分の初期の文体を作る上で、
49 人中、39人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
純文学的SF,
By 山田晃嗣 (神奈川県横浜市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229)) (文庫)
映画「ブレードランナー」の原作であると供に、小説のタイトルが「○○は××の夢を見るか?」と言う形で、 多くのパロディーを生み出したことで知られるSFの古典的名作。 始めて出版されたのは1968年のことらしい。 この本のテーマは、他のレビュアーも書いている通り 「人間とは?」「生命とは?」と言ったもの。 そのテーマは、それはそれで深いものがあるのだろう。 個人的にはタイトルにも現れている文章表現のセンスの良さ(訳も素晴らしい!)や、 「動物を飼うことが美徳」などの架空の社会的状況設定の面白さに 大いに興味を引かれた。 この本の登場人物たちは、我々から見たら奇異に思えることに価値観を見出し、 遥かに進んだ文明の中で羨ましいとはとても思えない生活を送っている。 それはいかにも滑稽だ。 しかしながら、実は私達自身の現在の価値観や生活も、 実のところ、おかしな価値観に支配された滑稽なものかもしれない。 そんなことを感じさせてくれるのだ。 加えて文章表現のセンスは素晴らしく、立派な純文学と言える。 SFに少しでも興味ある人なら外すことは出来ない本であるとともに、 純文学ファンにも読んでいただきたい本である。
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