固有名は社会的に伝達=伝承されるものだ、という説がある。ウォーホルはその媒体、即ちメディアである。しかし、未開民族における口伝などは情報があふれる昨今において一向に役立たとうとせず、ウォーホルは途方にくれる。そこで彼は自らを匿名の場におくことで解決を図る。彼の結論、それは誰でもが描き得、また作者さえを全く必要としない絵を描くことであった。これにより白髪鬘の奇天烈画伯の誕生が決まる。自らを商品として奉げることを義務付けられた資本主義社会に、匿名へ追い込まれざるを得なかったように振舞う者は商品としての固有名が散在する社会の状況を曝け出す。ウォーホルのカムフラージュを見るがいい。空恐ろしさの外なにものでもない。唯なる無辜のメディアが包隠さず見たままの社会を描くとこうなるのである。このカタログはすばらしい。自己撞着を繰り返すメディアとしてのウォーホルがたどった不幸な成長の軌道をなによりも克明に描いている。