「ここで主題となっている戦術や采配、チームマネージメントといったテーマを監督自らが取り上げた本は、イタリアには全く見当たらない」。
アンチェロッティの名前を見て、速攻で買った。ACミランを率いて欧州CLを2回制覇、セリエA優勝、世界クラブ選手権優勝。さらについ先日、今度はチェルシーの監督としてプレミアリーグとFAカップの2冠も達成した。今や、ヨーロッパサッカー界を代表する現役の名将の一人である。本書は、雑誌記事連載のために2001年からインタビューを積み重ねた結果を、新たに編集し直したものだ。
序章を入れると4章構成となっている。まず、ミランからチェルシーに移籍した経緯や、環境やリーグの違いについて最初の章にまとめてある。次いで、本章として「戦術論」「選手論」「監督論」が続く。
流石である。込み入った話は少ないが、豊富な実戦経験に裏打ちされた優れた内容である。論理的で明晰で、サッカー観やその思想がすっきり整理されている。また、自らが指揮をとった試合の分析を随所に交えており、どんな一流チームであってもはまってしまうことがある時間帯や、試合に出られない一流選手の処遇の仕方、年間を通じたコンディション管理の手法、時代ごとの戦術やサッカーを取り巻く環境の変化、さらにはヨーロッパサッカー界で活躍する一流選手達の特徴についても言及している。
サッカーの戦術や采配に焦点を当てた本が近年続々と出版されている。しかし、それらの大半は、評論家やジャーナリスト、あるいは既にキャリアの絶頂期を過ぎた元監督によるものだ。本書は、その点が異なっている。もちろん、優秀な選手達に恵まれた世界でもトップレベルのチームを率いている人の話しなので、日本のサッカーにもそのまま適用できることばかりというわけではないが、参考になるところは少なくないと思われる。
尚、本書の印税の一部は、難病研究を支援している財団に寄付されるそうだ。