あらすじや本の分厚さから,久方ぶりに5千円以上のお金を払ってでも買って読んでみたいと期待させられたスティーヴン・キングの最新作。
その期待は裏切られませんでした。
私は「シャイニング」「呪われた町」「ザ・スタンド」「デッドゾーン」といったキングの初期の作品が大好きで,本作のオープニングに初期作品の雰囲気を感じましたが,それもそのはず本作を最初に書き出したのは1976年のことで,技術的な問題で頓挫していたのだという。
さて,ドームの正体はいったい何なのか。
本作はその謎解きがテーマではありません。キングの描きたかったことは,追い詰めれた人間の行動なのです。
外部から遮断され閉ざされた空間や異常な状況下における群像劇という設定は,今回が初めてではなく,キングの得意とするジャンルです。
自らの常識を覆されるような状況に追い込まれた人間は,ほんの少しのきっかけで,普段からは想像できないような行動に出てしまう。
閉鎖され追い詰められた人間が持つ恐れは,怒りや憎しみといった感情によって誤魔化され,同じ状況下にある集団が形成されることにより,その感情はますますエスカレートしていく。
そして,その増幅された怒りが取り返しのつかない結果を招いてしまう。
怒りをいかにコントロールするのか。分かっていても難しいことです。
しかし,異常な状況下でこそ冷静に考え行動できる者が生き残ることができるのです。
キングの作品に共通して言えることですが,本作品でも非常にたくさんの人々の命が奪われます。
神は残酷だ,というキングに妥協はありません。
それでもまた新作を読みたくなり,そして読み出したら止められなくその筆力には相変わらずうならされます。
本作は,傑作「ザ・スタンド」や「IT」なみの長編ですが,ザ・スタンドよりも読みやすく感じました。
何か面白い本をお探しの方,お奨めです。