上巻でどんどん増殖した主要キャラクターが絞り込まれ、内面が吐露されていく下巻。
広がった世界にいくつかの深い淀みが示されることで、読み手はやっと物語のつながりを感じ始め、終盤へと向かうモチベーションが高まる。
しかし、JFKやキング牧師を配して綴られた前2作と比べると、今作には日本人にとってなじみのある歴史的事実が少なく、唯一残るフーバーとニクソンの存在感も薄く、すでに歴史とは切り離された形。特にハイチは呪術と麻薬に浸った幻想の森のようで、アメリカを舞台にした、という印象すら薄めてしまう。その結果、前2作を読んでいない身としては、この3部作が描く叙事詩の全体像を満喫できていないのではないか、という思いがぬぐえず、心残り。