1962年4月24日と5月14日録音。タイトル Undercurrent は、「 底流 」 という意。今でこそこういう写真珍しくないけれど1962年って事を考えると、研ぎ澄まされた彼らの感覚を感じる。
ビル・エヴァンス(p)は、このアルバムの前に出した『 ポートレイト・イン・ジャズ 』 や 『 ワルツ・フォー・デビー 』 で、スコット・ラファロ(b)やポール・モチアン(dr)とインタープレイという音楽手法を確立させた。インタープレイとは、一緒に演奏する者が同等の比重を持ち、個々を高めあいながら音楽で会話する事。例えばピアノトリオの編成、ピアノが主でベースやドラムが従というわけでなく、それぞれが主演。音の会話は舞台を観ている様。「ワルツ・フォー・デビー」の演奏で、ラファロのベースは、ビル・エヴァンスのピアノと融け合って、正にそんな感じ。
しかしその録音の10日後、ラファロが自動車事故で亡くなってしまう。ビルは盟友を失って深い絶望と喪失感の中にいる。
1962年のこの 『 アンダーカレント 』 のアルバムは、ビルの姿を見かねたジム・ホールが誘ったとも。ビルがラファロのベースでやりたかった音楽が、ジムのギターで生まれたとも言われている。
ピアノとギターは非常に良く似た楽器。単音のみならず和音もでる。アルペジオも出来る。和音を連続して弾くことで、リズム楽器としての機能を果たすことも出来る。音のスケールも良く似通っている。つまり、ピアノとギターはあまりに似通っているので、デュオでコラボすると、音がぶつかるのだ。
ジャズの世界では、楽譜の無い、インプロビゼーションが中心の演奏であるが故というのもある。
その音の「ぶつかり」を回避して、高速演奏の「My Funny Valentine」をエイヤッで実現した『Undercurrent』は、この「My Funny Valentine」1曲で名盤になった。
二人の演奏は、トータルしてリリカルで美しい。私はとりわけ5曲目の「 Skating In Central Park 」が好き。 優雅で楽しげで、心がふわふわと浮遊していくから。