この物語はどこを注目するかでがらりと印象が変わるように思う。萌えか。アクションか。ファンタジーか。ジュヴナイル的な心理描写か。言葉遊びやなどの技巧か。そういう意味では非常に懐が広い物語だし、それぞれの要素にまだ伸び白があるように思えるので、今後にも期待である。イラストレータも含めて(第1巻から上手な絵を描くイラストレーターだと思ったが、一巻と最新刊を比べると目に見えて日日日氏の作風に適応して行っている)。
個人的に注目したいのは心理描写。デビュー当時、十代だった作者はどことなく青臭い、視野の狭い心理描写が目立ったように思うが(そこが十代作家らしいという売りにもなっていたのかもしれないが)、さすがに社会に揉まれたのか、最近は包括的な視点で心理を描けている。
それが顕著なのは今回の、志田桐涼女という人物との対立。彼女に主人公の伊依は「同属嫌悪」を覚える。髪型、言動、視点、すべてが自分と似て非なるものだと、非常に嫌悪する。その嫌悪される涼女の心理は、デビュー当時の青臭い時代の心理描写なのである。つまり伊依は過去の自分と対決し、嫌悪し、傷つけあったのだ。それは作者の自虐なのだろうが、自覚的にそれをし、また冷静に見つめ、克服し抱きしめすらした伊依は、日日日氏の心理の成長そのものと思えた。あらゆる意味で今後に期待できる。主人公も物語も作者も。まだまだ発展途上、成長が見込めるので期待を込めて☆四つ。