Verveに残された『Bill Evans Alone』は、ビル・エヴァンスのピアニストとしての最大の特徴であるリリカルな音楽性を如何なく発揮したアルバムです。
1曲目の「Here's That Rainy Day」からいきなりエヴァンスの美しいピアノの世界にいざなってくれます。深く静かに、自分の心の中を見つめながらピアノの鍵盤をさぐるような感じがとても好きですね。心の揺れをスウィングするピアノで表現できる稀有なピアニストだとも思います。
2曲目の「A Time For Love」の演奏のように、時折音の密度を少なくし、静寂をもたらすことで、余韻と抒情が生まれます。決して全ての音符を隙間なく埋め尽すような演奏はしませんので、その辺りをテンポ・ルバートする奏法が個性を際立たせているのでしょう。
「Midnight Mood」の温かいスウィング感も好きです。このような軽快さもまた彼の演奏スタイルの魅力だと言えるでしょう。
14分以上演奏する「Never Let Me Go」はソロ・インプロヴィゼーションの中でも一際評価されている曲です。
内省的で陰影に富み、心の趣くままテンポを揺らし、様々なメロディとハーモニーを紡いでゆき、大きな音楽のまとまりとして提示した演奏です。彼の才能の煌きを最大限に発揮したソロだと言えますね。
演奏と共に少しずつノッてきたのでしょう。饒舌なピアノは熱を帯びてきます。何度聴いても素晴らしいとしか言いようのない演奏ですね。