「アレグリアとは仕事はできない」及び「地下鉄の叙事詩」の中編2作を収めたもの。私は津村作品は初読。
品番YDP2020, 商品名「アレグリア」と呼ばれる高性能複合機が前者の主役である。改題前の「コピー機が憎い!」が示す通り、女子社員ミノベが抱く「アレグリア」への感情の思い切った発露が主題である。高性能でミノベ以外の(特に男子)社員の前ではテキパキ働く癖に、ミノベがコピー機能を利用しようするとストを起こす「アレグリア」。ミノベが「アレグリア」を女性代名詞で呼んでいる事から、「アレグリア」を男子社員の前では媚を売り、仕事は適当にサボる女子社員仲間での厄介者の"擬物化"と取る事は容易い。しかし、機械とでも心を通じ合えると信じるミノベが、その信条を「アレグリア」に裏切られ、弄ばれながらも、会社内で頑張る姿を描いた奮戦記と取った方が素直である。先輩トチノ・保守員アダシノの造形やエピソードも巧み。ホッチキス(社名説あり)と記さず、ステープラーと記す拘りも愉快。ミノベの伝法な口調も手伝って、読者、特に働く女性の明日への糧を与える作品。私もコピー機のトラブルを最低百回は経験しているが、それをモチーフにするとはユニークな発想。読んで行くと機械的反応をしているのが人間の方に思えて来るから皮肉。「地下鉄の叙事詩」は意外な収穫。朝の地下鉄を舞台に、大学生・フリータ・女性会社員等の意識の流れが時には伝法に、時には生真面目に精緻に綴られる。大学生の意識は女性への妄想が中心だし、フリータの意識は将来への不安、女性会社員の意識は痴漢を初めとする周囲への殺意、と書き分けも巧み。全体の構成も練ってある。
コピー機の故障、満員の通勤・通学電車と言うありふれた日常を舞台に、我々が日頃抱いている不満の鬱憤晴らし役を果たしてくれる爽快な作品。