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最も参考になったカスタマーレビュー
8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
近代的精神の花開いた古代都市,
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レビュー対象商品: アレクサンドリアの興亡 (単行本)
アレクサンドロス大王によって建設された「地中海の花嫁」「世界の結び目」と呼ばれた都市の興亡を背景に、そこで繰り広げられた世界最高峰の知性の歴史を論じた一冊。
エジプトの肥沃な土地につくられ、アレクサンドロス、プトレマイオス、カエサル、アントニウス、クレオパトラといった面々が華々しく活躍し、そのもとで民族や文化の壁を越えてあらゆる知性が流入し、刺激し合い、探究心と好奇心のみなぎる空気を生み出した。名前をざっとあげるだけでエウクレイデス、アルキメデス、ガレノス、エラトステネス、アリスタルコス、クレメンス、アリウスというからそうそうたる顔ぶれである。 彼らは一貫して世界の、宇宙の、そして我々人間の体や心の仕組みを、そして生き方を追究した。それはひたすら人間の理性や知性を前向きに信じ、論理と実証を重んじ、普遍性を目指すものであった。この意味ですこぶる「近代的」「人間的」な精神が生まれたことになる。 やがてローマ帝国が分裂し、アラブ・イスラーム勢力に接収されることで一応の歴史的役割は終えるが、古典古代の知性を後世に伝える役目を再び後に果たすことになるところまでが描かれる。(そこからルネサンスや直接我々の今日につながる近代が始まる。) 現代の我々の「知」や社会の基盤も多くはそこに源流が求められることがよく理解できる本だ。訳は大変読みやすい。世界七不思議の一つとうたわれたアレクサンドリアの大灯台は崩れ落ちてしまったが、アレクサンドリアの知性の灯はいまも世界史全体を照らし続けているのだ。訳者は『話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く』と同じ方だそうだ。
3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
直線的西洋史の歪みをただしてくれる良書。,
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レビュー対象商品: アレクサンドリアの興亡 (単行本)
ギリシャからローマへ、
中世を経てルネッサンスという 西洋中心のリニアな歴史展開の歪みを正してくれる本。 ギリシャの知性は、そのまま西には向かわず、 シリア・アラブ・エジプトに伝播し保存、展開され、 1000年以上経過した後スペインで翻訳され、 ようやくヨーロッパに逆流する。 ギリシャとローマの間で埋没しがちの ヘレニズムという時代と社会・文化。 その中心となった偉大な都市であり、文化拠点だった アレクサンドリア。 著者たちは極力第1資料にあたりながら、 この街で展開された知の営為を精密に描いていく。 アレクサンドロス急死の後、エジプトを統治し、 大王の構想を具体化したプトレマイオスの存在と影響力の大きさ。 アレクサンドロス以来、4代続いて、当代随一の哲学者を 世継の家庭教師に迎えた家系。 紀元前250年頃に、地球は球体であると明示し、 地球の円周をほぼ正確に算出し(誤差1%以下)、地軸の傾きまで出し、 赤道、黄道、経線、緯線を書き込んだ地球儀を作成した アレクサンドリア図書館長でもあったエラトステネス。 こうした人物が登場しては、驚くべき成果を残していく。 後の異端尋問や魔女狩りや火刑などが、 わるい冗談なんじゃないかというような健全な合理性、 知的に物事の成り立ちを突き詰めていくエネルギー、 生き生きとして自由な好奇心。 結局、灯台も図書館も残らなかったアレクサンドリアの歴史は まるで砂の文字で書かれたもののようだが、 そこで起きた事柄の重みは消えなかった。 この書物の本体はツヤ消しの黒だが、 カバーは内容を反映したいい感じに仕上がっている。 問題なのは、文字が大きすぎて間が抜けていることと日本語訳。 語尾と訳語選択が、軟弱で、 歴史物を読んでいる歓びが涌いてこない。 主婦の友社からの出版だからなのか、訳者が女性だからなのか、 原著がそういう記述になっているのか、 「たくさん」という言葉や 「気をよくして」などという日本語を頁の中に何度も発見すると、 なんだか現代日本の軽いエッセイを読んでいるようで興ざめしてしまう。 内容的には☆4つ以上のすばらしさだが、 その点で価値が下がってしまう。
5つ星のうち 5.0
バランスのとれた好著,
By 町田の丘 (東京都町田市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アレクサンドリアの興亡 (単行本)
アレクサンドリアについて書こうとすれば、歴史、考古学、古代文献、古代思想史、宗教史、医学・科学史など様々な分野の知識が求められる。役割分担がどうなのかは分からないが本書が共著となっているのはもっともと思う。TV・映画制作に携わるジャーナリストの著作だけに、本書は先ず何より読みやすい。プトレマイオスがアレクサンドロスの遺体を奪取して(第2章「神を盗む」)アレクサンドリアに王朝を創業してからクレオパトラ自害までの300年、それに続くローマ支配とキリスト教台頭の600年―の歴史過程はしっかり書きこまれ、これにムセイオン(一大研究センターと付属図書館)設立、世界の七不思議ファロス大灯台の建設、七十人訳ギリシャ語聖書、入浴中に比重・体積を思いつき「エウレカ!!」(わかった!)と叫ぶアルキメデス、キリスト教徒に惨殺される女性思想家ヒュパティアの悲劇(最近映画化された)、などの興味あふれるエピソードを織り込みながら、読者を最後まで飽きさせない。 各章のタイトルがシャレていて、第1章が「粉と砂」。砂一面の大地に小麦粉で設計図をひきながら都市建設を始める労働者たち。(小麦粉はエジプトでは手に入らない白墨の代用品)地面に線が引かれるや否や、これをついばみに空から舞い降りる鳥の群れ。 1000年後、イスラム軍隊が都市の徹底破壊に乗り出した時、港湾の穀物倉庫が攻撃され、再び小麦の粉が空に舞い上がります。(終章) 5章「知性の都市」7章「天体の音楽」8章「小さな球体」12章「時計じかけの都市」の各章で、この都市で活躍した思想家、文学者、天文学者、数学・物理学者、工学者と医師たちの業績が語られます。その多様さ、レヴェルの高さに今更のように驚嘆します。理科系の分野に詳しいのも本書の特徴です。 奇跡的なことですが、この時期この都市に古代のあらゆる英知、知恵、知識が結集されました。ローマによる専制支配もなく、<理性>よりも<信仰>を優先するキリスト教の支配がはじまる前のことです。「考える自由」を何よりも大切にしたのがアレクサンドリアでしたが、ローマの歴代皇帝、キリスト教の高位聖職者、イスラムのカリフがこの自由を、そして知識の宝庫ムセイオンと図書館を破壊したのです。キリスト教以前の多様で豊饒な学問が「異教」と同一視されたことが悲劇でした。 いずれにせよギリシヤ・ローマの文明がストレートに西欧のルネサンス・近代につながったのではないようです。それはアレクサンドリアという巨大な知識のダムに、いったんはため込まれたものの、ダムは破壊され水はしぶきをあげて砂漠に飛び散ったのです。キリスト教西洋は、最終的にこの都市を破壊・略奪したイスラム世界を非難しますが、実際には末期のアレクサンドリア自身頑迷な宗教闘争で自滅しつつあり、アレクサンドリアやビザンティン帝国図書館の書棚で破壊を免れたわずかな書物を手に入れ、翻訳して後世に伝えたのは、イスラムの学者たちだったのです。この細々とした砂漠の水脈がやがてペトラルカやロッテルダムのエラスムスなど人文主義者の手に伝わりルネサンスを生む一方、地球が丸いことを突き止め、地球の円周・自転軸傾斜度を割り出し、世界地図作製まで手掛けたアレクサンドリア学者の知識が後の大航海時代を可能にしたのです。 アレクサンドリア―それははるか昔の遠い都市の物語のようですが、私たちが高校時代に学ぶことになる代数・幾何、人文地理、物理・化学・天文学の殆どがここで生まれていることを知るとなんだか親しみを感じます。是非一読をすすめます。
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