「大王・大帝」と称される人物役にはコリン・ファレルは気品不足ではないか?と、当初二の足を踏んだ。
神の子であると信じ、母の邪な魂を引き継いでいない事を心に願い常に高潔たらんとした事。その道が途方も無い戦いへの道であり、何かから逃れる道でもあった事。冒頭一時間でコリンへの懸念は完全に吹き飛んだ。苦悩し走る・・そう、冒頭の暴れ馬を乗りこなすシーンと彼の人生は被る。行き着く先が血まみれの谷と分かっていても走り続ける、英雄であるが故に走り続けねばならないと抱え込み疲弊する精神、これだけ「人」としての姿を見事に演じられるとは・・。アンジーの老け役も及第点である。
確かに彼は夢想家だっただろう、でもこれだけの苦悩と葛藤を抱え只管未開の地に走りつづけた美しい馬、その魂の帰り着いた先はどこであったか・・余韻溢れる幕切れである。
もう一点、男同士の関係が普通であった紀元前当時、ヘファイスティオンとの友愛には何度も胸が詰まった。私見だが、「共に死すは男同士の特権」「共に生きるは男と女の特権」そう思っていたが、この作品を見て「生も死も共にするは男と男の特権」と感じた。少々の嫉妬も感じる。二人が自分達をアキレスとパトロクロスに例える点やギリシャ神話の神々の逸話を引き合いに出すのもとても興味深く、心憎い演出。
競技場・空中庭園・特に戦場の素晴らしさ。流石オリバー・ストーン監督。彼の描く戦場は正に地獄。前半のカウガメラの戦いと後半のインドの戦いで趣を全く変えて見せているのも流石としか言いようが無い。インドの戦象軍に立ち向かうアレキサンダーの姿が胸を締め付ける。
ストーリーテーラーに名優アンソニーホプキンスがいるため歴史下地が無い人にもある程度は分かりやすく出来ている、只、100%愉しむには世界史・神話の知識は必須。
興行成績を狙った派手な作品とは感じなかった、寧ろ重厚な人間ドラマ。もう一度じっくりと見たい。