内容(「CDジャーナル」データベースより)
このCD、聴いて良かった……歌とギターによる、シンプルでアルカイックで、ほのかに民族的な、かけがえのない宝のような歌の数々……音楽は聴き手を襲わず、静かに穏やかに、しっとりとしたため息とともに我々の心へそっと忍び込む。ただひたすらに音楽。★
内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
ゆれる、ゆれる。遠くいにしえの響きかと、静かに耳を澄まして想いをたおやかに落ち着けているその刹那、不意に熱く濃厚な情を湛えたラテンの響きがよぎって過ぎる。やや、これはいったい、と消えゆく音を追いかけて意識が揺らぐそのかたわらで、そのはかなくも不思議に粋な情のオモムキに、気分はすでに、ホ、とトキメキを覚え始めている。馴染みのはずの響きのイメージが、お決まりの場所に向かってオチて固まるのではなく、どこかゆらり漂ってこまやかに色合いを変え移ろいゆく。それに連れ、イマジネーションが次から次へとふくらんでゆく。しかも。耳は醒めていながら、気持ちはそこはかとないセンチメントに包まれている。そのしっとりとゆれる時間が実に心地いい。16~17世紀の古い歌を現代の感性と響き合わせて見事に息づかせている波多野とつのだのデュオが新たに手がけたのは、うって変わって20世紀の音楽。南米に始まり、フランス、イギリス、日本と、有名無名とり混ぜて、多彩に歌のデリカシーを楽しませる。のみならず。そのアプローチの新鮮さ。古楽の音の間合いで捉えた20世紀の音、とでも言えようか。ことさらな身振りを装わず、楚々と透き通って抒情のツボに触れる波多野の声。和声を感じリズムのイキを捕まえて、ラテンの血やら近代フランスの色気やらを彷彿と浮かび上がらせながらも端正さを崩さないつのだのギター。細やかに色合いを変幻させてゆく作品の仕掛けとの、その得も言われぬスタティックな距離感。そして、互いの音のスタンスを保ちつつ音に則してイマジネーションを交わしあう、そのつかず離れぬインタープレイの絶妙の間合いが、くだんの“しっとりとゆれる時間”を生み出していくのである。お陰で、独り無防備にしんと耳を傾けていたら、遙かな想いに耽るごときV.ウィリアムスの音の後にソと現れた武満のメロディに、何やらわけもなく涙がこぼれ落ちそうになった。思わず心惹かれるイイ音楽である。 (中野和雄) --- 2003年02月号