NBC交響楽団のトスカニーニと、フィラデルフィア管弦楽団のストコフスキーとが、互いに指揮台を交換したシーズンの記録。ここでのトスカニーニの演奏は、NBC交響楽団とのものと較べて、音色はもとより、フレージングもずいぶんと異なった印象を与えるもの。フィラデルフィア管弦楽団の有名な木管の深く素晴らしい響き(チャイコフスキーの『悲愴』、ドビュッシーの『海』、メンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』など、ほれぼれとするものです!)、同じく有名な弦のしっとりとした艶やかな音色が見事です。当然トスカニーニは、この素晴らしいオーケストラの個性を熟知した上で、バランスや、フレージングを変えています。特に木管楽器のフレージング、いつものトスカニーニのスタイルと違います。全体の印象は、NBC交響楽団の演奏を聴き慣れた人にとっては、幾分と緊迫感が後退し、推進力が控えめなのですが、その分きっちりと丁寧にコントロールされた感じですし、歌い回しもゆったりです。トスカニーニのファンならば、聴き比べはかなり面白いものですし、所々ちょっと驚くようなみずみずしさがありますので断然お薦めです。但し、トスカニーニの演奏をあまり聴いたことのない人にとっては、少しマニアック、つまり、いい演奏ですが、無理にこれを聴かなくてはならないというようなものではありません。