本作は10年前のライ・クーダー企画、ヴィム・ヴェンダース監督「ブエナヴィスタ・ソシアルクラブ」のタンゴ版という先入観を誰しもが持つと思います。
その、キューバの老ミュージシャンたちによる「ブエナ〜」では、勿論多くの老ミュージシャンたちが参加していますが、ブライム・フェレール、コンパイ・セグンドなど、限られた人が中心だったし、ヴィム・ヴェンダースのインタヴューでの演出や映像編集の上手さもあって、傑作ドキュメンタリー映画となっていました。
それと比較すると、本作は少々散漫な印象派どうしてもしてしまいます。また、底抜けの明るさはありません。しかし、心にずしりとのしかかるものが残るのは、国民性や音楽性の違いなのでしょうか。
相通じるものは、音楽と共に重ねてきた年月から醸し出される雰囲気。彼らの長い人生に微塵も「悔い」を感じさせない。実に痛快な老人たちということ。そして「生きることは素晴らしい」と感じさせてくれる。
映画の前半の中心となるのはレコーディング風景で、録音のための演奏ですから曲が細切れなのが残念ですが、バンドネオンのうねるような動き、タンゴ独特のピアノの音、リズム感、胸が高鳴ります。
また、ところどころ出てくるブエノスアイレスの街並みは哀愁に満ちています。このミュージシャンたちが輝いていた数十年前の街は、どんなだったんだろう。今は、この町もきっと世界中と同じような軽音楽が流行っているのだろうけれど、タンゴのリズムで満ちていた街。いまもその面影が漂い素敵でした。
そして、ラストの国宝級の巨匠達が一堂に会したステージ。まさに圧巻です。