黙っている人々の意見は聞こえない。黙らされている人たちの素顔は見えない。見たり聞いたしたいのが、イスラムの声や人々の表情だという人もいるはずなのに、この国では、見えないもの聞こえないものは、いないと同じことだとみなす驕慢が、相も変わらずまかり通っている。アルジャジーラが出現しても、その事情に変わりはなかった。それがとんだ間違いであること、思わぬ厄災につながる危険を孕んでいることは、いくら強調しても、し足りない。しかし、ともかくその詳細な報告が出た。サウジアラビアで生まれたイギリス人ジャーナリストの本の翻訳だが、訳文は読みやすいし、その点を云々するのは後回し。とりあえず、出た、出したということに拍手を贈りたい。内容は、リアルでかつスリリング。ぼくは、それまで何回も聞いていたはずのグレングールドのバッハのCDに収録されていた、微かな彼の唸り声にはじめて気がついたときのように、人が生きることの生々しさにやられてしまった。